(レポート)地元出身の若き俊英ピアニストが真摯に奏でた夢、希望、祈り—松岡磨美ピアノリサイタル
- 投稿日:2011.09.03
厳しい夏の暑さも峠を越したかのような8月最後の土曜日午後4時半、まさに晩夏の夕暮れ時。地元出身の若き女流ピアニスト、松岡磨美さんのリサイタルが菖蒲館ホールで開催されました(2011年8月27日)。彼女にとって実質的な地元デビューとなりますが、デビューということで言えばホールとピアノも今春デビューしたばかりという、若々しさと初々しさに満ち溢れたリサイタルとなりました。
夢、希望、そして祈りのこもった真摯な演奏
この日集った約90名の聴衆の前に現れた松岡さん。そのルックスはキュートの一言。しかし、そんな彼女がこれから演奏する曲について自分の言葉でわかりやすく語る姿に、プロの演奏家としての真摯な一面を垣間見ました。そこで感じた真摯さは、実際の演奏が始まってさらに強く印象づけられるものとなりました。
松岡さんの演奏の魅力は一言で言ってメロディラインの美しさ。それはしなやかで抒情性にあふれ、例えれば、ルノアールの絵のような優しく明るい色彩を感じさせます。さらに、3人の作曲家それぞれの世界観を忠実に再現するために、心血注いで研さんを積まれた痕跡も多々垣間見ることができ、音楽に対して真摯に取り組むその姿勢に強く心打たれました。また、初々しいホールのピアノを力で抑えるのではなく、優しくなだめるように自然と自分の音楽の世界に引き込む彼女の手腕に、プロ演奏家としての確かな資質を感じました。
今回のリサイタルは正味約40分ほどのショートプログラムですが、とりあげた3人の作曲家の魅力を充分堪能できました。特に、松岡さんがプログラムの最後に取り上げたリストのハンガリー狂詩曲第12番、そこに込められた夢、希望そして祈り。それらを若き演奏家が真摯に再現するその姿に目頭が熱くなる思いでした。
熱演を繰りひろげる松岡さん
地域の文化拠点としてのホール
さらに、地域に根づいた文化の要塞として期待される菖蒲館ホールの実力も見逃せません。ホールとしては舞台もなく、こじんまりとしていますが、その音響的な魅力はコミセンの域をはるかに超えています。人が多くても音が固くならず、かと言って響き過ぎず、最も快適に明瞭に響くホールです。照明もよく計算されており、さまざまなステージニーズに対応できそうです。
地元出身の若き演奏家によって門が開かれたとも言える若き菖蒲館ホール。これから積み重ねていくであろう歴史を思うと胸が躍ります。そして、芥川也寸志の言葉が脳裏に浮かびました。
よきホールは、そこに、よき音楽を育て、よき音楽家たちを育て、そして、そのまわりに、よき聴衆を育てる。(芥川也寸志)
(お知らせ)
パルテノン多摩小ホールにおいて、松岡磨美さんのリサイタルが開催されます。
- 日時:2011年10月7日(金)19:00開演
- 場所:パルテノン多摩小ホール
- 入場料:2,000円(高校生以下1,500円)
- 曲目:ベートーヴェン:ソナタ第21番「ワルトシュタイン」、ショパン:幻想曲 op.49 他
詳しくは パルテノン多摩のホームページをごらんください。
(主催)唐木田コミュニティセンター運営協議会 コンサート・イベント実行委員会
(文と写真)小林和弘